私達は企業の未来をアシストする中小企業診断士のプロ集団です。

活動報告:2019年11月度定例会

 11月度定例会は、中郡会員の企画として「『ビジネスに活かす芸術思考』~アーティストが0から1を生み出す思考をヒントにイノベーションを起こす~」と題し、芸術思考学会副会長の秋山ゆかり様、芸術思考学会事務局長の浅井由剛様から、「アート思考とは何か」、「アート思考の実践例」についてご講演いただきました。

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■アート思考とは何か

 はじめに、秋山ゆかり様から芸術思考の生い立ちを含め「アート思考とは何か」について、ご紹介いただきました。秋山様は、GE Internationalや日本IBMで事業開発の責任者を勤められました後、「株式会社Leonessa」で戦略・事業開発コンサルタントとして活躍されている一方、声楽家としても活動をしている方です。

 「芸術思考」は、明治大学法学部教授・理学博士である阪井氏、画家、アートセラピー研究者、東北芸術工科大学講師である有賀氏による造語です。人が芸術を作り出すときに創出・創発する思考プロセスからヒントを得て、学習者主導の「生きる力」をはぐくむアプローチとして2012年に構想されました。また、「芸術思考学会」は、芸術思考に関する学術的研究を活性化するとともに、教育現場や新規事業創造における芸術思考の普及をはかることを目的とし2018年に設立されました。

 事業開発のプロセスと声楽家としての舞台づくりの共通スキルとして、①作りたいもののイメージ作りをして共有するプロセス②人を巻き込み、多様な人たちを一つの目標に動かすコミュニケーション③成功しないかもしれない恐怖と向き合い挑戦し続けるマインドセット、の3点をあげられました。

 アート思考は、①自分の感情を深堀りする(イノベーションの源)、②表現する(イノベーションの行為)、③誰かと共鳴する(イノベーションの成就)という3つのプロセスで構成されています。特に第1のステップでは、自分の感情の深堀りによる気づき、自分と世界の関係を発見・理解することが大切になるそうです。そして、チクセントミハイ氏が提唱している個人起点のcreativityだけでなく、公共における創造性「“Big C” Creativity」を意識することが、大きなビジネスを作っていく上でカギとなってくるとのことです。また、イノベーションはまったく新しい領域で起こすだけでなく、1つの領域でも起こし続けることが可能であり、その成功事例として月桂冠をとりあげられました。イノベーションを起こす際には、まったく新しい領域なのか、隣接する領域なのか、現在の事業の深掘りなのか、どの軸でイノベーションを起こすのか、企業として明確にしておくことが大切になります。また、ユニリーバに例をとり、チャレンジとスキルのバランスが取れていることが、成功の条件であるとご説明いただきました。

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■アート思考の実践例

 続いて、浅井由剛様から「アート思考の実践例」についてご紹介いただきました。浅井様は、「株式会社カラーコード」で代表を務められながら、静岡県地域づくりアドバイザー、明治大学サービス創新研究所客員研究員としてもご活躍されている方です。

 まず、デザイン思考とアート思考の違いをご説明いただきました。デザイン思考が問題解決型のアプローチであるのに対し、アート思考は自分の感情部分にアクセスし、掘り下げることで熱い気持を呼び起こし、共感を呼ぶアプローチであるという違いがあるそうです。

 デッサンは、見ている対象をそのまま紙に描いているように思われていますが、実は違います。モチーフを観察して知覚した情報を元に、あるべき絵のイメージを頭の中で構築し、そのイメージをキャンバス上に再構成して描いているのです。絵に苦手意識を持つ方は頭の中でイメージを構築できていないことが多いのです。まずあるべき姿をより具体的にイメージすることが重要になります。そのために「観察」が大切になります。そして、アウトプットを具体的に考えながら観察する方がただ観察するよりもインプットされる情報量は多くなります。これは、新製品や新規事業など現在の世界に無いものを人に伝える能力の向上に有効であるというご説明をいただきました。

 アート思考の実践例として、老舗ネオンサイン企業と川根本町で実施したワークショップを取り上げられました。老舗ネオンサイン企業では、仕事と自分の未来(企画)を考え、自社発信サービスを作るきっかけとなりました。川根本町では、故郷と自分の関係性を再構築でき、町の在り方を考えるきっかけとなったそうです。ワークショップを通して、社員や職員が、自分たちの会社、自分たちの故郷への見方や考え方が変わっていった様子をご説明いただきました。また、川根本町シティブランディングビデオ映像を交えながら、ワークショップ時の参加者の様子などについてもお話をいただきました。

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■質疑応答

最後に、予定されていた残り時間いっぱいを使って活発な質疑応答が行われました。聴講した会員との間で交わされた質疑応答の一部を紹介します。

(質問)世間と自分の感情の距離感が合わない場合の対処方法はあるか。
(回答)時代を先取りしすぎて社会に受け入れなかった「世界初音楽ダウンロードサービス」の失敗経験があるため、共鳴を得られないときは断念している。世の中の半歩程度先を捉えているものが成功している。

(質問)アーティストのようなバックボーンを持たない人でもアート思考を活用できるか。
(回答)自分の感情にアクセスすることができれば可能であり、そこをファシリテートしていくのがワークショップの意義のひとつである。また、アート思考実践のツールとして、自分と向き合うためにジャーナリングを行うことが有効である。
 *ジャーナリングについては次のコラムを参照のこと
 「3つの質問」に答えていくと、自分の心の動きが見えてくる

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実体験を元にした講演、質疑への回答を行っていただき非常に有意義な月例会となりました。最後は、秋山様、浅井様に向けての大きな拍手をもって閉会しました。

活動報告:2019年10月度定例会

10月度定例会は、井上会員の企画として『どうやってるの!?本業×家庭×診断士 三方良しの働き方改革』と題し、「企業内診断士」にとっての働き方改革のご紹介と、家庭を持ちながら企業内診断士として活躍されている倉石 友美様、相川 佳寛様、神宮司 大心様の3名をお招きし、座談会形式で企業内診断士としての実体験をお話しいただきました。

 

働き方改革の背景・内容

 まず、働き方改革の背景とその内容について、三木会員よりご紹介いただきました。

 働き方改革とは、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」することであるとご紹介いただきました。働き方改革が推進されている背景として、①労働人口の減少、②長時間労働の社会問題化、③働く人のニーズの多様化があり、生産性の向上や就業機会を拡大することが求められているとのことでした。

 企業内診断士における働き方改革のメリットとして、①業務効率化による診断士活動への充当時間の増加、②勤務時間の柔軟化により診断士活動の時間の融通が利く、③副業解禁により収入が発生する活動への参加や積極的な営業行為が可能になる点をご紹介いただきました。その一方で、注意点として、①本業が疎かになることや健康を害すること等の時間・労力の管理面の懸念、②診断士活動への理解を会社や家庭から得ることが重要であるとのことでした。

「三方良し」の働き方改革に関するアンケート結果

企業内診断士向けに「診断士活動と会社」、「診断士活動と家庭」という2つの観点で実施したアンケート結果を廣瀬会員よりご紹介いただきました。

まず、「診断士活動と会社」に関するアンケート結果をご紹介いただきました。9割以上の診断士が資格取得を会社に対して報告していますが、会社として副業を認めているのは約半数とのことでした。また、会社に対して気を付けていることとして、本業優先に取り組むこと、早めのスケジュール調整、本業が疎かになっていると思われないようにすることを心掛けているとご紹介いただきました。診断士活動が本業に活かされた例として、人脈形成によるビジネス拡大や、講師業としてのプレゼンスキル向上等が挙げられました。

次に、「診断士活動と家庭」に関するアンケート結果をご紹介いただきました。パートナーから診断士活動への理解を得るために、将来の収入源確保、キャリアアップの準備、社外コミュニティの形成等を活動理由として説明しているとのことでした。また、家庭に対して気を付けていることとして、スケジュールを小まめに共有することや、活動内容を伝えて理解を促すことが挙げられました。診断士活動で得た収入の扱いとしては、診断士活動の活動費へ充当、家庭の収入に充当、自身の収入とするが家族での外食等で還元するというような様々な考え方をご紹介いただきました。

最後に、「会社」「家庭」「診断士活動」のバランスの取り方として、「本業重視派」、「バランス派」、「診断士活動積極派」、「冷静派」があり、自分にとっての「診断士活動」の位置付けによりそれぞれのバランスは異なるとお話しいただきました。

家庭持ち企業内診断士の座談会

後半は、倉石 友美様、相川 佳寛様、神宮司 大心様の3名による座談会が開催され、井上会員の司会のもと、事前に伺った質問や会場からの質問に回答する形で進行していきました。

倉石様は、診断士として複数社の顧問契約を持ち、補助金申請支援等の企業支援の活動を行っています。

相川様は、地域の農園との振興プロジェクトや、インバウンドや観光支援のプロジェクトを地域の商店街と実施されています。

神宮司様は、副業としての研修講師活動や、ご自身で立ち上げた新規の研究会の運営をされています。

 

普段の1日の過ごし方は?という質問に対しては、

倉石様「子供がまだ小さく、診断士活動に充てる時間がほとんどありませんが、育児をパートナーに時々お願いする等、パートナーの協力によって得られた隙間時間を活用しています。」

相川様「診断士活動は平日夜や有給休暇を活用して実施しています。休日は診断士活動、PTA活動、趣味の野球・フットサル、家族との団らん等それぞれバランスを取りながら過ごしています。」

神宮司様「平日夜は家族との団らんや診断士関係の作業をしています。休日は、土曜日日中は研究会活動や、自身の野球チームの活動ですが、土曜日夕方や日曜日は家族との外出等の家族と過ごす時間に充てています。」

との回答を頂きました。本業以外の時間を活用して診断士活動をしながら、主に休日に家族との時間、趣味等を楽しむ時間を取るというように過ごされていました。また、診断士活動を進めるうえで家族の協力は重要であるというお話を頂きました。

 

次に、三方良しのために工夫していることは?という質問に対しては、

倉石様「時間当たりの提供価値を高めることや、時間の使い方を工夫しています。具体的には、書籍やセミナー受講によるスキルアップや、睡眠時間をしっかり取って健康第一の生活を送るよう心掛けています。」

相川様「家庭に対しては土日の家族との交流やPTA活動を積極的に取り組むこと、会社においては業務を早く終わらせメリハリのある生活にすることや、普段の生活の中で体力を付ける運動(職場がある31階から階段を駆け降りる等)をすることを心掛けています。」

神宮司様「会社はお金を稼ぐ場所、家庭は家族と思いっきり遊ぶ場所、診断士活動は自身の成長の場、とそれぞれ考えています。診断士活動は本業で稼ぐための成長手段と考え、これらを自分が良いと思うバランスを付けて活動しています。」

との回答を頂きました。3つの要素に対してメリハリを付けて生活することに加えて、健康にも気を配って活動されていることが分かりました。

会場からは「家族から診断士活動をどの程度理解されているか?」、「診断士活動と本業のシナジーはあるか?」等のパネラーの皆様に対する多くの質問があり、それらに対して実体験をもとに回答していただき、有意義な座談会となりました。最後に、パネラーの皆様に向けての大きな拍手を持って座談会は閉会となりました。

以上

活動報告:2019年 9月度定例会

9月度定例会は、日景会員の企画として、「カードゲームで学ぶSDGs~中小企業の2030年を見通す~」と題し、昨今注目されつつあるSDGs(エスディージーズ)を取り上げ、カードゲーム「2030SDGs」を通じて体感的に基本を学びつつ、中小企業にもできるSDGs活用策、それを支える診断士の役割についてご説明いただきました。

■SDGsについて
まず、SDGsについて説明がありました。「持続可能な開発目標」(SDGs:エスディージーズ)は、2015年の国連サミットで提唱された国際目標であり、17のゴールと169のターゲットで構成されています。また、途上国のみならず先進国も取り組む目標として国連が推進しており、2017年のダボス会議でも取り上げられたり、経団連の企業行動憲章にもSDGsの考え方が盛り込まれたりするなど、広がりを見せています。

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■2030SDGsについて
次に、カードゲーム「2030SDGs」について説明いただきました。ビジネスの現場から小中学校にまで広がっているゲームで、これまでに10万人近い人が参加したとされています。

「2030SDGs」は、SDGsを体感し、2030年の世界がどうなっているのかをシミュレーションするゲームです。
今回の定例会では、参加者を12のチームに分け、各チームがそれぞれの目標(富、環境、社会など)の達成に向けて、ゲームを行いました。各チームの手元には、①お金、②時間、③プロジェクトのカードがあり、それらを用いたり、他チームと交渉・協力したりして目標の達成を目指します。
各チームの活動を踏まえた「世界の状況」もリアルタイムで把握できるようになっており、前半が終わった地点では、「経済」が特に進展しており、「環境」、「社会」がやや弱いという状況でした。後半には、チーム間の交渉や協力が進み、12チーム中11チームが目標を達成し、「世界の状況」のバランスも改善しました。

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日景会員によれば、過去の事例では、参加者の属性(ビジネスパーソン、環境団体など)により、達成される目標(経済、環境、社会)の度合いが異なり、それぞれの特徴が表れる傾向にあるとのことです。また、前半では、自チームのゴールに集中したり、損得を考えたりという参加者が多い一方、中間発表を挟むことで、後半では、バランスを意識し、他の人の達成状況、全体の状況を考慮する傾向にあるとのことでした。

■SDGsに関する取り組み
その後、SDGsに関連して、バングラディシュのグラミン銀行の取り組み(女性向けマイクロファイナンス)が紹介されました。また、私たちの周囲の食品・日用品に使用されているパーム油を生産するためにインドネシアの森林伐採が悪化していることなど悪循環が発生している状況も。そこで、環境・社会に配慮した原料を用いた製品に付されるものとして、例えば、パーム油、漁業資源、森林資源などの認証制度(認証マーク)の広がりが紹介されました。

参加者からは、「知ろうとする努力、勉強するところから始めることが大切だと感じた。」、「株主総会で外国人投資家(アジア)からSDGsに関する質問が出るなど、自社でも考えていく必要がある。」といったコメントが発表され、日景会員からは、年金積立金を運用するGPIFなどの機関投資家が投資先企業に対して環境・社会・ガバナンスに関する取り組み(ESG)を重視する動きも始まっており、欧州では特に企業活動に対して厳しい視点から投資活動を行っていることも紹介されました。

また、SDGsはグローバル企業、大企業の取り組みが目立っているが、中小企業で特徴的な環境にやさしい経営、従業員を大切にする経営、地域に根付いた経営などはSDGsにマッチしており、中小企業こそSDGsの担い手であるといったことが説明され、中小企業診断士として支援していく重要性が紹介されました。そうした中小企業の事例として、株式会社大川印刷(横浜市)、山陽製紙株式会社(大阪府泉南市)、株式会社太陽住建(横浜市)、ライフスタイルアクセント株式会社(熊本市)「ファクトリエ」などの取り組みが紹介されました。
大川印刷では、衛生面・環境面を意識した経営を重視しており、従業員主導での取り組みで地域や社会に必要とされる活動をしています。また、これらSDGsの活動を通して従業員が活き活きと自発的になったということです。日景会員からは、一番印象的だった同社の大川哲郎社長の言葉として、大川印刷におけるSDGsの活動は「苦しいからこそやっている」(従業員や地域に配慮しないとやっていけない)ことだとお話しいただきました。
山陽製紙では、ホームページ掲載用の写真撮影をきっかけに従業員が自発的に川の清掃活動を行うようになったことがきっかけに。やがて地域から感謝されるまでになり、社員が自発的にSDGs活動を行うなかで、環境に配慮した新製品・新サービスを開発し、環境省「環境人づくり大賞」を2年連続受賞しています。
太陽光パネル設置やリフォーム事業の太陽住建では、本業を通した社会貢献、地域貢献につながるビジネスモデルを目指して、障害者雇用、空き家事業などに取り組み、国連のハイレベル政治フォーラムにおいて社長スピーチが実現するまでに至っています。
ライフスタイルアクセント社の国産アパレルブランド「ファクトリエ」は、高度な技術、こだわりを持つ工場と連携し、工場~消費者間を直結して適正価格で製品を提供しています。SDGsに直接言及して活動しているわけではないですが、工場が立地する各地域の活性化にもつながっており、複数のSDGsゴールに貢献する結果につながっているとのことです。

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最後に、2030年を見通し、中小企業もSDGsを通じた成長を行うことが重要となっており、それを支えられるような中小企業診断士のあり方をお話しいただきました。
SDGsの取組はすぐに売上アップ等の効果が見えるものではなく、経営理念がしっかりしていないとうまくいきません。その点も正しく理解したうえで中小企業診断士にはSDGsを通じた支援に取り組んで欲しいと最後に伝えられました。

以上

活動報告:2019年 8月度定例会

8月度定例会は、夏原会員の企画として『副業最前線!自分を200%いかす働き方』と題し、ナレッジワーカーズインスティテュート株式会社 代表取締役で中小企業診断士の塚本恭之様より、副業に関する動向と、中小企業診断士としての副業実践方法についてご講演いただきました。

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■副業に関する近年の動向

はじめに、働き方改革を切り口に近年の政府の取り組みについて紹介いただきました。

1980年代、日本のGDPや競争力は世界の中でも一二を争う水準でしたが、近年、生産性が大きく低下しています。このような現状に対して日本の生産性を向上させるために、政府が取り組んでいる施策や方針の公表について説明いただきました。

【取組例】

・「2030年展望と改革 タスクフォース報告書」において、人的資本大国実現のための具体例として、自ら働き方を選択する複線型の雇用モデルを提示(内閣府)

・2018年1月のモデル就業規則の改定により、政府として副業を原則容認(厚生労働省)

・副業・兼業促進のガイドラインを公表(厚生労働省)

 

また、国家公務員の副業解禁により約28万人が兼業の担い手となる可能性があることや、企業が副業を認めることへの障壁となっている総労働時間の管理方法を見直す検討が進んでいることを説明いただきました。さらに、他国の事例として、フランスにおける副業制度である個人事業主制度が2009年に導入されて以降、開業率が向上し、経済の活性化につながっていることを説明いただきました。

 

■ビジネス環境及び社会や個人の変化

次に、ビジネス環境の変化、社会や個人における変化について紹介いただきました。

2019年1月に副業を認める企業の割合が22%となったことが経団連から発表されたことを説明いただき、イノベーター理論におけるキャズムを超えているため、今後も副業を認める企業が増えることが想定されるとされました。また、副業を解禁している企業について、事例や経営者の考え方を説明いただきました。また、副業にメリットを見出していない大企業が未だ多い中、IT系の企業に副業を解禁する企業が多いことやその背景にある業界の特徴などを説明いただきました。

さらに、社会、会社、個人の変化について多方面から説明いただきました。

・大企業の人的資源確保の戦略が内部調達型から、外部リソースを積極的に活用する外部調達型に変化してきた。

・各自のリーダーシップによって成果が決まるようなプロジェクト型の仕事が増加することで、個人に求められるリーダーシップが変化しており、今後は全員主役型のリーダーシップであるシェアードリーダーシップが必要になる。

・労働人口の減少や人生100年時代の到来といった社会構造の変化から、パラレルキャリアが求められるようになるが、第2のキャリアには助走期間が必要である。

・知識を用いて人や社会に貢献する人材であるナレッジワーカーの考え方が重要視され、ますます人が経済の主役になる。

・資本家、経営者、労働者の関係がフラットになるため、人を惹きつけるビジョンや思いが、より大切になる。

 

■中小企業診断士としての副業実践方法

副業と一口に言っても、複業、伏業、復業といった様々な当て字で表されるように、対価の有無や契約形態などによって様々な類型がある旨や、それぞれのメリット・デメリットの説明に続いて、中小企業診断士としての副業の実践方法を紹介いただきました。

 

【プロボノ編】プロボノ活動に参加

方法①中間支援団体への登録

方法②自身で募集団体を探す

【コンサル編】コンサルタント業務を受託

方法①スキルシェアサイトへの登録

方法②顧問紹介サービスへの登録

方法③フリーランスコンサルタントサイトへの登録

方法④自身で支援団体を探す

【起業編】自身の会社を起業

方法①個人事業主

方法②非営利組織の創業

方法③株式会社/合同会社の創業

 

それぞれの方法について、オススメの中間支援団体やサービス、メリット、注意点などを説明いただきました。

また、社外での活動だけでなく、社内の他部署に対してボランティアやフリーランス等の立場で支援するという、社内複業という選択肢があることを説明いただきました。

その他、次のような点についても説明いただきました。

・経産省人材支援室が副業実践者を対象にしたアンケートで、「副収入が得られた」「良い経験になった」「新たな出会いがあった」のような、副業によって充実感が得られているという声があること。

・会社を辞めずに複業として起業した後に専業起業する方が、会社を辞めてから専業起業する場合に比べて、成功率が高いという日本政策金融公庫の調査結果があること。

 

■中小企業と副業

続いて、中小企業が副業に対してどのように向き合うべきかという考え方を紹介いただきました。

副業を認めている中小企業を対象に行ったアンケートによると、「本業の会社への忠誠心が高まる」「目標達成意識が高まる」といった良い効果が出ていることが伺えるため、中小企業においても生産性の向上のために副業を認めることが有効であるとされました。

副業が中小企業に与える良い影響として、人材採用において自社で正社員を雇用するのではなく、人材をシェアするという発想が可能になることや、社外に委託可能な業務を社外の副業人材へのアウトソーシングや協業で解決できることを挙げられました。また、中小企業が復業人材に来てもらうためには、自社の見せ方を工夫し、復業者にとって魅力のある企業であることを示すためのブランディングが重要であると説明いただきました。

 

■副業解禁はチャンス

最後に、副業解禁の流れは、企業の規模や法人/個人を問わず、多方面にチャンスをもたらす旨を紹介いただきました。

国として副業を解禁する流れは、中小企業にとって正社員採用が難しい昨今、複業人材による人手不足解消や事業承継面での後継者確保のきっかけ作りに有効である。大企業にとっては、オープンイノベーション人材の確保に有効である。中小企業診断士にとっても収入の複線化や起業がしやすくなる。同様に、ベンチャー企業、起業、非営利組織、個人等など多方面にチャンスがある。と締め括られました。

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■質疑応答

夏原会員に紹介いただいたリアルタイム質疑応答サービス「handsup!」を用いての活発な質疑応答が行われました。聴講した会員との間で交わされた質疑応答の一部を紹介します。

 

(質問)製造業や建設業の中小企業が複業労働者を受け入れる場合はどのような職種が多いか。

(回答)製造業のライン担当として受け入れるというよりは、経理や人事系のバックヤード業務で受け入れる事例が多くある。

 

(質問)個人事業主になるために開業届を提出するメリットは何か。

(回答)青色申告を行わない場合は税制面でのメリットはないが、創業における補助金・助成金を受ける機会を得られる点や、屋号を決めることで自身のモチベーションが高まるという点においてメリットがある。

 

以上

活動報告:2019年 7月度定例会

7月度定例会は、染谷会員の企画として『もっと聞きたい!事業承継入門講座・支援事例』と題し、中小企業診断士が最低限おさえておきたい事業承継支援の基礎と、染谷会員自身が携わった実際の支援事例についてご講演いただきました。 20190716-1

■事業承継支援の基礎

事業承継支援をとりまく環境として、中小企業経営者の高齢化、直近10年間の主要施策、事業承継税制を紹介いただきました。
また、事業承継が進まない理由として、

  • 事業者収入の低下(事業者対雇用者収入の比率は低下傾向にある)
  • 個人保証・担保提供している個人資産の引き継ぎ(負の遺産)
  • 債務超過企業の割合が高い

が挙げられ、リスクが大きい割にリターンが小さい経営に承継する魅力が感じられなくなっていることを説明いただきました。
このような状況ではあるものの、事業承継は企業にとって以下のような3つのチャンスであり、事業承継支援では組織作りの観点も重要とされました。

 1.経営意識変革のチャンス
 2.さらに利益を生み出せるチャンス
 3.経営体制再構築のチャンス

その他、「経営者保証に関するガイドライン」の概要として、一定の要件のもと経営者の個人保証をしないという選択ができるようになったことが肝であり、経営未経験の後継者が承継に伴う巨額の借入に不安を覚え、承継を躊躇することを和らげる効果が期待される旨を説明いただきました。
一般的に承継と聞くと資産の承継を想像する方が多いが、事業承継は、経営の承継、経営者の交代、資産の承継を含むより広い概念であることが示されました。
また、後継者に関する状況・問題点として、後継者が親族の場合は取引先や関係者の理解は得られやすい反面、適切な能力がない場合がある。逆に、親族以外の社内から後継者を選定する場合は後継者が事業内容を把握している反面、保証能力・資金力が不十分な場合がある。ということをお話しいただき、まだケースは少ないものの、M&Aのような第3者が承継することが以前よりは現実的な選択肢となっていることを紹介いただきました。 20190716-2

■事例紹介

後半は、染谷会員が実際に携わった6つの支援事例を取り上げ、各社の状況と問題点、それに対して採った具体的な提案や対応を紹介いただきました。その後、聴講されていた会員との間で以下のような質疑応答が交わされました。

 (質問)支援先の会社関係者の動きが鈍い場合に、提案スキームを動かすきっかけになるのは何か。
 (回答)株主や金融機関など、支援先にプレッシャーをかけられるステークホルダを巻き込んで、働きかけてもらうことが有効である。それができない場合には、泥臭く対応していくしかなく、会社がうまくいっていない原因に対して注力していくことになる。

 (質問)今回事例として取り上げられたのは、役員や家族の人間関係、人間性に難があるケースが多かった。事業承継支援はこじれた案件が多いと考えて良いか。
 (回答)こじれていない案件は承継の専門家でなくとも解決できるためかもしれないが、企業再建・承継コンサルタント協同組合経由で持ち込まれるものは、放置されて問題が熟成した、こじれた事案が多い。

 (質問)経営者からの信頼を失わないようにするために心がけていることはあるか。
 (回答)真摯に一生懸命行動することが重要である。

■最後に

最後に、事業承継支援には「向き合い」、「寄り添い」、「共に歩む」ことが必要である旨をお話しいただきました。支援企業の体制は十分ではないことが多いため、十分に向き合うことが重要であり、経営者は孤独であるため、寄り添うことが求められる。それらを通じて中小企業診断士は支援企業と共に歩む存在である。とのことでした。 20190715-3

以上

活動報告:2019年 6月度定例会

6月度定例会は、前半に本年9月以降の定例会企画を決める選考会(コンペ)を実施しました。後半は平成31年度総会、沢田幹事による特別講演が行われました。

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■定例会企画選考会(コンペ)

コンペでは、事前のネット投票による1次選抜を通過した以下の15企画について、企画者よりプレゼンテーションが行われました。

  • No.1 HRCで取り扱った内容で人気があったコンテンツ3連発
        古山文義
  • No.2 遠〇先生から学んだ、講師の作法
        森琢也
  • No.3 ゼロ次産業プロジェクトの挑戦(山口県光市)
        木下忠
  • No.4 キャッシュレス決済、軽減税率対策補助金、軽減税率制度の相談実務
        山口達也
  • No.5 行動経済学を理解しビジネスに応用する
        沢田一茂
  • No.6 診断士が16ページ本を作って1000円で売るまで
        小田恭央
  • No.7 中小企業のIT支援について
        村上知也
  • No.8 中小企業の売上に「写真」はいかに貢献できるのか? 
        ~写真の有効活用により売上向上した事例を通じて~
        石田紀彦
  • No.9 「どうやってるの!?本業×家庭×診断士 三方良しの働き方改革」
        井上誠
  • No.10 カードゲームで学ぶSDGs ~中小企業の2030年を見通す~
        日景聡
  • No.11 『ビジネスに活かす芸術思考』
         ~アーティストが0から1を生み出す思考をヒントに新規事業を生む~
         中郡久雄
  • No.12 パワポやワードでチラシやらなんやらをさくっとつくるための「ずるい」デザイン講座
        赤田彩乃
  • No.13 ワークショップの真実(The Workshop and the Abstract Truth )
        中口宗紀
  • No.14 自分の中のアーティストを呼び起こす!『ビジョン思考』ワークショップ
         ~デザイン思考のその先へ~
         浅野俊太、土佐林義孝、地引智美、高橋信行、川原茂樹、増渕健二、木下忠
  • No.15 大半の中小企業の事業承継の第一歩は事業再生!
         ~必須知識として「特定調停」「事業再建ADR」を学ぶ~
        岩本亨

持ち時間である4分間を存分に使い、熱意のこもった素晴らしいプレゼンテーションが実施されました。終了後、本発表内容について、コンペ当日の参加者により投票が行われました。
集計は以下のルールに基づいて行われ、事前のネット投票とコンペ当日の投票を合算した点数で順位を競いました。

  • コンペ当日の投票:1位3点、2位2点、3位1点
  • 事前のネット投票:1位3点、2位2点、3位1点

集計の結果、順位は以下の通りとなりました。

1位から9位までの企画が、本年9月以降の定例会で発表される予定です。

  • 1位 中小企業の売上に「写真」はいかに貢献できるのか? 
        ~写真の有効活用により売上向上した事例を通じて~
        石田紀彦
  • 2位 大半の中小企業の事業承継の第一歩は事業再生!
        ~必須知識として「特定調停」「事業再建ADR」を学ぶ~
        岩本亨
  • 3位 自分の中のアーティストを呼び起こす!『ビジョン思考』ワークショップ
        ~デザイン思考のその先へ~
        浅野俊太、土佐林義孝、地引智美、高橋信行、川原茂樹、増渕健二、木下忠
  • 4位 パワポやワードでチラシやらなんやらをさくっとつくるための「ずるい」デザイン講座
        赤田彩乃
  • 5位 ワークショップの真実(The Workshop and the Abstract Truth )
        中口宗紀
  • 6位 『ビジネスに活かす芸術思考』
        ~アーティストが0から1を生み出す思考をヒントに新規事業を生む~
        中郡久雄
  • 7位 カードゲームで学ぶSDGs ~中小企業の2030年を見通す~
        日景聡
  • 8位  「どうやってるの!?本業×家庭×診断士 三方良しの働き方改革」
        井上誠
  • 9位 診断士が16ページ本を作って1000円で売るまで
        小田恭央

 

■年次総会

年次総会では、進行役である七田幹事より平成31年度総会開会の宣言、次に会計報告・幹事改選を議題とする旨の報告がなされました。
会計報告については、沢田幹事より収支報告書に基づき報告が行われ、審議では全会一致で可決されました。
また、七田幹事より会員状況(増減1名減)とチーム状況(新設1チーム/解散1チーム)について報告頂き、幹事改選の審議では17名の再任と1名の新任について可決されました。
さらに検討事項として、サポータ活動費の上限金額変更に関する議案が提出され可決されました。
確認事項の連絡、質疑応答の後、七田幹事よりの「中小企業診断士は一般の方と比べ、より高い倫理観に基づいたプロとしての行動が求められる」という士業倫理の重要性を再確認する講和で閉会しました。

■特別講演

沢田幹事による特別講演では、第一の習慣:「主体性を発揮する」を中心に『7つの習慣』の概要を紹介頂きました。

図2

 

■懇親会

定例会後の懇親会でも、コンペでの健闘を称えあったり、2次選抜での劇的な逆転の理由を考察したりと盛り上がりをみせていました。

活動報告:2019年 5月度定例会

5月度定例会は、坂本会員の企画として「仕事が獲れる!!『セルフブランディング』の作り方」と題し、坂本会員自身が「薬剤師×フォトグラファー」としてブランド構築するために実施してきた取り組みを講演いただきました。 

初めに、「誰もいない森で木が倒れていたら音はするのでしょうか?」という問いを投げかけられました。この答えがセルフブランディングの答えであると述べられ、講演が始まりました 

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フォトグラファーなったきっかけについて  

薬剤師であった坂本会員がフォトグラファーを始めたきっかけについてお話しいただきました。 

坂本会員は、趣味ダイビングを通じて出会った1枚のクジラの写真感銘を受けたことがきっかけ写真を始められました。当初は趣味として、風景などを撮影するだけでしたが、中小企業診断士の資格取得機に写真を作品として販売することにチャレンジされました。 

販売する中で、自身の作品は競争の激しいレッドオーシャンに位置することを知り、それでも自分の趣味を仕事に活かしたいと考えた結果、人物写真やビジネス写真を撮影することに取り組まれました。 

当時本業であった薬剤師の仕事は法規制等によりマーケティングをいづらい側面がありました。そのため、フォトグラファーという自身の副業についてはマーケティングをしっかり実践したいという思いを持ち、セルフブランディングに取り組まれました。  

仕事を獲得した流れについて 

次に、坂本会員が仕事を獲得した流れについて、マーケティングの「4P」のフレームワークを元にお話しいただきました。 

①Product 

まずは実績作りを行うために、薬剤師という特性を活かして調剤薬局やクリニックに営業をかけていきました。HPによる集客効果が大きいとは言えない業種のため、当初は顧客獲得に苦労されましたが、Webで根気よく発信し続けた結果、仕事を受託するようになりました。受託した仕事を、薬剤師で培ったコミュニケーションスキルと業界知識を活かし一つ一つ丁寧に取り組んだ結果、紹介などにより仕事がつながっていきました 

顧客目線を大事にクライアントファーストで対応するという軸をブラさないことで、仕事を広げることができたとお話いただきました  

②Promotion 

名刺交換Facebook→ブログの流れでプロモーションしたことをご紹介いただきました 

名刺交換 

名刺交換を顧客接点の入り口と踏まえ、名刺は写真とデザインのクオリティにこだわりました。名刺には、自身の何を知ってもらいたいかを明記するようにされました。「中小企業診断士」「フォトグラファー」「薬剤師」の三本柱の肩書きを明記することで、印象に残る名刺を作成されました。 

また、名刺交換の際に印象良く覚えてもらうコツとして、簡潔で明確な自己紹介や、相手の名刺を裏までよく見て質問することが大切だとお話しいただきました。 

Facebook 

プロフィール写真を自身だとわかる写真にしておくことや、更新を継続することが大切だとお話しいただきました。日本で1番高い山を知っていても、2番目、3番目の山はほとんどの人が知らないように、1番になるものがないと印象に残らないとお話いただきました。 

ブログ 

更新頻度を高くし継続することが大切だとお話しされました。情報へのアンテナを高くネタ集めを行うとともに、ターゲットであるサラリーマンが気軽に読めるよう1000文字程度でポイントを絞って書くように心掛けられました。また、読みやすく、個性を出すための見出しや構成の工夫についてもお話しされました。  

Price Place 

儲けることよりも幅広い人つながることを重視し、相場より安い値段設定にされたとお話しされました。 

インターネットを中心にプロモーションされていたためインターネット上では意識的に良い人脈を広げることが大切とご紹介いただきましたまた、仕事を紹介することで良い人脈を広げることも必要であるとご紹介いただきました。

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さいごに 

「誰もいない森で木が倒れていたら音はするのでしょうか?」という問いに対して、答えは「音はしない」であると坂本会員は話されました。 

音を受け取る人』つまりは、『自分を知るがいなければ音は届かないどんなに良いものを作っても、誰かに届ける術がなければ意味がない。そのため、自分を知ってもらうこと、知ってもらうために継続して発信することが大切であり、継続するためにはその取り組みを楽しんで実施することが重要である最後にお話しいただきました。 

現在は研修講師として活躍されフォトグラファーのお仕事はお休みされていますが、研修講師の仕事も自身の旗を掲げることが大切であり、セルフブランディングの考え方は今でも非常に役立っているとのことでした。 

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活動報告:2019年 4月度定例会

4月度定例会は、岩本会員の企画として『日本の事業承継の生々しい現状を知る~平成30年度事業承継税制改正による変化は如何に?~』と題し、CRC企業再建・承継コンサルタント協同組合 理事/公認会計士・税理士の春田泰徳様にご講演いただきました。

今回の講演では、平成30年度の改正で大きく変わった事業承継税制の概要と留意点について、ご紹介いただきました。

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■平成30年度の法改正で創設された事業税制承継の特例措置について

初めに、平成30年度の法改正で創設された事業承継税制の特例措置についてご説明いただきました。 事業承継税制は平成21年度に経営承継円滑化法の枠組みの中で整備され、後継者が非上場会社の株式等を相続または贈与により取得した場合に相続税・贈与税の納税が猶予される制度であり、中小企業の事業承継を円滑にすることで、地域の雇用が確保されることなどを目的としていました。しかし、十分に活用されていないことから、平成30年度に事業承継税制の特例措置が創設されました。これまでの制度(一般措置)に並行する措置として制度化され、業界内でも『大盤振る舞い』な改正として、驚きを持って迎えられました。

今回の講演では特例措置について、

  • 10年以内(2027年12月31日まで)に実際に承継を行うものを対象とする
  • 都道府県に事前に特例承継計画の提出が必要(2023年3月31日まで)
  • 対象株式数の上限が撤廃され、相続税の納税猶予額が100%に拡大
  • 税制適用後の打ち切りリスクが低減されたこと

などの具体的な内容をご紹介いただきました。 制度の拡充前は年間400件程度の申請でしたが、制度拡充後の申請件数は年間6,000件に迫る勢いで増加しており、今後も高い水準で制度の活用が進むと見込まれています。

 

■特別措置の留意点について

次に、非常に使いやすいといわれる特例措置について、留意点をご紹介いただきました。

この制度では、事業承継に伴う贈与税・相続税が単純に免除されるのではなく、実際は後継者の納税が猶予されます。株式等の贈与時に本税制を受けた場合であっても、相続時の相続税算定額には、納税猶予を受けた株式等の価値も「みなし相続財産」として算入されるため、後継者以外の相続人の相続額に影響を及ぼすこととなります。また、親族外継承する場合では、相続申告時に親族外承継者も加わることとなり、手続き上の問題が生じうるそうです。その他にも、適用要件を満たさなくなった場合などに適用が取り消される可能性があり注意が必要となります。例えば、本制度適用中は毎年、継続届出書等の提出が必要であることや、資本金・準備金の維持などをご紹介いただきました。本制度を活用する際には、適用要件に該当しているのかを継続的にモニタリングし、手続きの管理体制を整備することが必要になり、大きな注意点になります。

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■さいごに

最後に春田先生は、本税制を使用するメリットがあるのは株式の総評価額がある程度高く後継者も決まっている会社であるとしたうえで、こういった会社はその時点で事業承継はほぼ成功していると言える一方、本当に事業承継が進んでいないのは、後継者がいない、事業価値が棄損している会社であると問題提起されました。 また、「期限のある制度であることから、事業承継の可能性のある会社は特例承継計画を提出する方が良いと言えます。制度を最終的に活用しない可能性があっても、計画を出すだけで、後継者探しの後押しになります。」とご紹介いただきました。

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2019年3月度定例会 活動報告

2019年3月度定例会 活動報告

 

3月度定例会は、仲田会員の企画として、診断士は本当にAIに代替されないのか!?「LINEで起業相談!!起業ライダー マモル」の開発のお話が行われました。

 

■本企画の経緯

冒頭に仲田会員より。今回のお話にいたる経緯についてお話頂きました。

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人工知能やロボットで代替可能になる日本の労働人口の割合は49%。士業については、80~90%も代替されるとのデータもあるとのことでした。特に「創造的思考」、「ソーシャルインテリジェンス」、「非定型的業務」の3点は代替されにくく、診断士の代替率は0.2%と言われているそうですが、仲田会員は「本当に診断士は代替されないのか?」と現場のコンサルティング業務に従事する中で疑問に思ったことが、本企画のきっかけになったとのお話を頂きました。

マモルは診断士にとって敵なのか、味方なのか!中小機構の真の目的は?ぜひ今後のAIと診断士について考えるきっかけにしてほしい、ということで今回の発表が始まりました。

 

■「起業ライダー マモル」とは

ここからは、中小機構の前田様による起業ライダーマモルの現状と開発の裏側のお話を頂きました。

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起業ライダーマモルはLINEによるAIチャットボットで、現在は9,100人の友達がおり、毎日5~10人ペースで友達が増えているとのことでした。開発のきっかけは、中小企業の経営支援ニーズは増えているが、職員の数が足りていない中で、経営支援にAIを利用できないかという議論が機構内ではじまったことでした。様々なアイデアがある中、4年目の職員が発案した、充実しているが読まれていないJ-Net21起業サイトのコンテンツを活用し、当時流行りのAIチャットボットを組み合わせた企画を採用されたそうです。

20~30代の起業準備者をターゲット、起業の実務情報をLINEを使っていつでもどこでも相談できるをコンセプトに開発が開始されたのでした。

 

実際にプロジェクトを開始すると、既存のコンテンツをそのまま利用することは当時の技術では難しいという問題が発生しました。データをすべてFAQの形でインプットする必要があり、膨大で地道な作業が必要であったとのことでした。専門的な回答も必要であったことから、8名の診断士の協力を得て、ベンダーを決め、約半年後にはプロトタイプによるスモールスタートが始まりました。

 

■診断士VSマモル

マモルの強みと弱みを説明するために、起業相談3本勝負として3つの質問について、会場の診断士の回答とマモルの回答を比較する実演がありました。

実演を通じて、マモルの弱みとしては、1.用意したとおりにしか回答できない、2.前の会話を覚えていられない、3.長文や複雑な質問は苦手、その一方でマモルの強みは、1.定型的な質問であれば、最適な回答ができる、2.膨大に覚えることができる、3.文句を言わずに24時間365日働く、ということでした。そのため、診断士とマモルは相対するのではなく、共存できるのでは、というお考えを頂きました。

 

■グループワーク

ここからはグループワークで、マモル2.0を開発するとしたら何をやってもらいたいか?についての意見交換を行いました。

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会場からも、事業の成功確率を提示するのはどうか? 質問して伴走するようなコーチングはどうか? 質問チャートでやりたいことを明確にするような機能は? ただ愚痴を聞いてくれる機能は? 女性版や方言版なども面白いのではないか? 会話のやり取りのログを専門家へトスアップするような機能はどうか? など活発な意見が出てきました。

 

■最後に

最後に、締めの言葉として、前田様から、AIチャットボット→有人チャットボット→窓口相談・セミナーという診断のスキームが将来出来上がるとよいと考えていることや、人の気持ちに寄り添う診断士であることで、AIとの共存をしていきたいという決意を伺い、会場は大きな拍手に包まれ終了いたしました。

2019年2月度定例会 活動報告

2019年2月度定例会 活動報告

 

2月度定例会は、FATと中小企業M&A研究会の合同企画として「プロジェクトF ~創業者の想い、M&Aに挑んだ診断士たち~」と題して、中小企業M&Aの理解を深める講義とグループワークが行われました。

 

■中小企業のM&A

冒頭で、FATの宇都会員より、今回の合同企画の経緯、企画の目的、本日の流れについてお話いただきました。

図1

その後、中小企業M&A研究会の飯野会員より、中小企業のM&Aのニーズや実態、押さえるべきポイントについてご説明いただきました。

中小企業を取り巻く環境として、後継者不在に悩む中小企業が増えており、国や自治体などがM&Aを促していること、また、スタートアップ企業を主なターゲットに新事業や研究開発力向上を目的としたM&Aが増えている状況があり、診断士としても中小企業のM&Aの実態やポイントを押さえておく必要があるということでした。

中小企業のM&Aの実態として、オーナー以外に経営状態・財務を把握している「番頭」を押さえる必要があること、信頼関係の構築や誠実な情報開示などが成功するM&Aのポイントであると述べられました。

図2

■FAT印刷を舞台としたM&Aのグループワーク

続いて、宇都会員より、グループワークの事例について説明がありました。過去の定例会で数回登場し幾多の難局を乗り越えてきた「FAT印刷」。同人誌印刷にも進出し、業容が拡大基調のFAT印刷に対し、首都圏エリアへの進出を目論む関西のM印刷から買収意向が示されたという設定です。

今回のグループワークは、秘密保持契約締結後の「意向表明書を提示」する段階の想定であり、意向表明書には、今後の正式交渉のベースとなる希望買収価格、買収の諸条件を記載し提示するものであると、飯野会員からM&A実務の流れの紹介とあわせて説明をいただきました。

 

グループワークでは、FATとM&A研究会の会員が、各グループにファシリテーターとして付き、FAT印刷の番頭である殿山経理部長役になりました。グループメンバーは買手のM印刷の立場で、配付されたFAT印刷の直近のBS、PL、今後の収支計画を確認し、FAT印刷の企業価値算定をおこなうために必要なヒアリングを、殿山経理部長に行いました。

図3

グループメンバーは、簿価純資産価額と時価純資産価額、営業権(のれん)など、飯野会員からの補足説明も参考にしながら、回収が懸念されるため評価減すべき項目やプラス評価すべき項目を洗い出し、殿山経理部長に質問を繰り返していました。はじめは何をどう質問したらよいか悩みつつ、殿山経理部長への質問を重ねるごとに、勘所を押さえてヒアリングを重ねるグループもあれば、突っ込みが鋭く、企画側が想定していたポイントをことごとく指摘してヒアリングしたグループなど、さまざまでした。

 

ヒアリング後、時価純資産価額の評価と、今後の事業展開見通しを3パターンでシミュレーションしたDCF法の価格を勘案して、FAT印刷に提示する希望買収価格をグループメンバー内で決定し、各グループが順に意向表明書を殿山経理部長に提示しました。

FAT印刷が想定していた買収価格より低い額が提示され、殿山経理部長が「この話はなかったことに・・」と退席したところが2グループありましたが、大半は交渉継続となりました。1億円以上の買収価格提示により殿山経理部長が歓喜の握手をしたグループが1グループでたときは、会場は拍手で盛り上がりました。

グループワーク後、FAT及び中小企業M&A研究会が想定していた解答例が示され、時価純資産法で評価減すべき要素、営業権の評価について解説いただきました。短時間のグループワークでしたが、買手と売手の相対で価格が決まっていく過程を体験できた時間となりました。

 

■最後に

飯野会員より、中小企業のM&Aを成功させるポイントとして、

-都合が悪いことも前倒しで伝えるなど、常に誠実であることが重要

-オーナーにとっては人生の一大決断であるため、経営者の気持ちを忖度した親身の助言を心がける

-価格には正解はない。過剰な経費の計上、簿外債務などの確認をしっかり行い、正常な利益水準の見極め、バランスシートの適切な評価し直しが重要

など、診断士としてM&Aに関与する際に留意すべき点をお話いただきました。

図4

価格の折り合いがついても買手が買収資金の調達ができないケースもあるなど、基本合意後のアクシデントなど、実体験からのお話も聞くことができ、また、希望買収価格を算出する疑似体験のグループワークを通じて中小企業のM&Aの一端を感じ、理解を深めることができた定例会となりました。 

図5

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