開催日 2026年8月29日(土)15:00-17:00
テーマ 『THE 質問力』
講 師 森 琢也 会員(ゲストスピーカー:飯山 晄朗 氏)
エグゼクティブサマリー
本報告は、伴走型支援やLSP(レゴシリアスプレイ)研修を専門とし、高い補助金採択実績を持つ森琢也氏(株式会社クック・ビジネスラボ代表取締役)が、プロコーチ・メンタルトレーナーとして全国で活躍する中小企業診断士の飯山晄朗氏をゲストに迎え、「質問力」をテーマに行った講演の記録である。経営支援現場で陥りがちな「自分のための情報収集」から脱却し、経営者自らが気づきを得る「相手のための質問(未知の窓)」へと展開するための技術や、ラポール(信頼関係)構築の方法、経営者のタイプ別アプローチについて解説している。また、実際のロールプレイングを通じた良い例・悪い例のデモンストレーションにより、相手のモチベーションや「ワクワク」を引き出す伴走型支援の実践的な対話スキルが示された。
主なポイント
ヒアリング力(質問力)がもたらす圧倒的な支援成果
森琢也氏は、補助金支援や経営支援を例に挙げ、高い成果を出すためには「ヒアリング力」があると強調した。診断士の専門知識(財務会計や経営理論など)はベースとして必要だが、現在のAI時代においてはそれだけで他者と差別化することは難しい。目の前の経営者のモヤモヤした思いやビジョンを対話によって具現化し、深く「伴走」するコミュニケーション力こそが最重要である。
「自分自身のため」から「相手のため」の質問への転換
質問の質を決定する3つの観点として「目的(自分/相手)」「時間軸(過去/未来)」「形式(クローズド/オープン)」を提示。多くの支援者は、レポート作成などのために「自分が知りたい情報」を集める「自分のための質問」にデフォルトで陥りがちである。しかし、相手が「思いもよらず気づきを得る」ような「相手のための質問」をいかに意図的に行えるかが重要である。
ジョハリの窓を活用した対話の心理と「未知の窓」の開拓
対話の場における状態を「ジョハリの窓」に例え、お互いに見えていない「未知の窓」にアクセスすることの意義を説明した。相手自身に話をしてもらい、自分で話すことで自ら気づきを得る「オートクライン効果」を引き出すことが、究極のヒアリングであり、経営者から深く感謝されるコンサルティングにつながる。
ラポール構築と対話のフロー(クローズ・オープン・クローズの法則)
信頼関係がない状態で、いきなり重いオープンクエスチョン(未来や可能性についての広い問い)を投げても、相手は心を閉ざしてしまう。対話の序盤では、雑談等を交えつつ、相手が必ず「イエス」と答えられるクローズドクエスチョンを重ねてラポール(信頼関係・一体感)を構築する。その後、思考を深めるオープンクエスチョンを展開し、対話の最後は「はい/いいえ」で意思決定やコミットメントを促すクローズドクエスチョン(クロージング)で締めるという、意図的なフロー構築が有効である。
実演デモンストレーションから学ぶ「伴走支援者」の対話態度
若手診断士の独立に向けたキャリア像をテーマにしたロールプレイングを通じて、支援現場での悪い例と良い例を解説。
• 悪い例:相手の話を途中で遮り、支援者側の関心やアドバイスを一方的に押し付ける。結果として尋問のような対話になり、相手の思考を閉ざしてしまう。
• 良い例:笑顔、相槌、共感的態度、および自己開示を用いて安心感を与え、オープンクエスチョンで多角的に相手の本音(ワクワクする部分や理想像)を引き出す。「未来の自分から今の自分へのアドバイス」を想像させるなど、視点を変える問いかけが相手の主体的な気づきを促した。また、相手の「ありたい姿」が具体化していない場合の対応策として、目標とする人物(ロールモデル)の有無を問いかけること、それでもイメージが湧かない場合は、そのテーマをさらに深掘りするか別のテーマへ移行するかを相手自身に選択させる手法も、有効なアプローチとして示された。
経営者のタイプに応じたアプローチと継続的なトレーニング
創業社長に多い「コントローラータイプ」には数字や目標達成に焦点を当てた問い、周囲との調和を重視する「サポータータイプ」には周囲への影響に関する問いなど、経営者の資質(タイプ)に応じて切り口を柔軟に変えるべきである。質問力は一朝一夕には磨かれず、自分の癖を客観的に把握することが困難なため、録音・録画を用いた振り返りや、フィードバックを受けられるロールプレイング訓練を継続的に行うことが必要である。
以上
