活動報告:2022年9月度定例会

2022年9月の定例会は、ブランドファイン代表の山口達也会員から、2022年度「企画提案コンペ」において第4位を獲得した、「今がチャンス!値上げの上手な進め方」というテーマで講演をしていただきました。

山口会員は、神奈川県産業振興センターでの創業相談のほか、東京都中小企業振興公社などでベンチャー支援を行ってきました。2008年にブランドファインを立ち上げ、デザイン、ブランド、販売促進、創業、経営革新などを中心にコンサルティングを行っています。

 本日は、創業者向けに行ってきた「値決めのイロハ」をもとに、お話をいただきました。

 

(前半)

1 PSM分析を試してみよう

PSM(Price Sensitivity Measurement、価格感応度調査)は、「高い」「安い」「高すぎる」「安すぎる」という4つの質問のアンケートをターゲットに実施するもので、新商品・新サービスの価値や価格の見当がつきにくいときに有効であり、「安い」より「高い」が上回る=妥協価格、「高すぎる」も「安すぎる」も少ない=理想価格、「高くない」を「高すぎる」が上回る=上限価格、「安くない」を「安すぎる」が上回る=下限価格として、価格の適正を把握する手法であることを紹介されました。

 

               PSMをグラフ化する

 

 

2 値段を決めるのに必要なこと

値段を決めるのに必要なことは「適正利益が取れているか」ということであり、事業を行う以上「税引前利益で10%以上であること」を、京セラ会長の稲盛和夫氏を例に説明され、経営者の「利益を出すと悪い、稼いだら悪い」といった意識を変えてもらうことの重要性を話されました。また、内部留保が悪いのではなく適正利益を出すことで、研究開発を行う、社員に高い給与を払う、人材投資を行うよう説明され、コンサルタントである中小企業診断士がしっかりと経営者にいうことが意識改革になると話されました。

一方、価格の危険なつけ方として、社長や経営層が原価を把握しておらず顧客に説明できない、売り上げを中心にして粗利益(売上高総利益率)を考慮していないことであり、しっかりと把握する、競合企業の価格と同じくらいにする、お客ではなく社長、従業員がいくらなら買うかで決める、といったことについて例示で示されました。

 

3 価格と顧客心理の関係

値付けの心理として、必ずしも安い方が顧客に喜ばれるとは限らないこと、時代とともに変化することを説明され、ラインナップや端数価格をうまく採用して提供することで顧客のイメージを変えることができることを理論を交えながら説明がありました。

 

4 値段を上げるためのテクニック

効果は同じでも顧客に対して提供の仕方で変えられることとして、商品カテゴリーをリフレームすることで枠組みを変えてしまうこと、これまでの製品用途とは別の用途を付与することで土俵を変え値付けを再構成することができることの説明がありました。

値上げの進め方として、①こちらから下げる提案をしない、②徐々にクーポンを排除する、③正価販売とする、④値上げ予告する、⑤「高い」と言われたら「そうですね、いい商品です」と打ち返す、ということを話されました。そして、とにかくバイヤーが「高い」というのはあいさつであり、「気にするな」「いいものであることを説明」と経営者にいうよう指摘されました。一連の会話を練習することも一考であるということです。

また、順番として、新規から値上げし、順調に推移することを確認のうえ、既存取引先に予告のうえ半年後ぐらいから値上げすることを話されました。一方、値上げに踏み切る理由はとにかく外部環境の責任にすること、内部は言わないようにする必要があるとのこと。外で顧客に頭を下げる際には「申し訳ない態度」をとるが内部には適正価格なのだからひくつにならない、堂々と上げるよう従業員教育を進めること、「いいものなのだから高い、商品力がある」と理解するようにさせることが重要と説明されました。

以上、次のとおり前半のまとめを行いました。

 

(後半)

5 コンサルティングの進め方

経営者にどのようにマインドをかえてもらうか、事例をもとに説明されました。

中小企業は固定費が比較的少ないため、売上や量が減っても利益がでればいいこと、「忙しい」のであれば値上げをして量を下げることで利益を確保しつつ社員に投資することが重要であるとのことです。

そのために、現状把握、財務状況や社長の戦略、ターゲット層を把握し、そのうえで商品力を見極めターゲット層として儲かる顧客を判定、儲からない顧客を切る検討をすることを指摘されました。

6 事例紹介

 ①エステサロン、整体

 ②ベビーシッター

 ③中華料理店

 ④ベーカリー

7 値上げを提案したときのクライアントの反応

驚く、反対する、幅を圧縮するといったことがおこる。そのため、圧縮されることを見越して、大きく提案することも一考であると説明されました。

8 値上げして失敗したらどうするか

経験上、失敗したことはなかったが、もし失敗したらもとに戻すことは絶対してはいけない、割引券、セットメニュー、ランチメニューで実質的に安くする工夫をすることを話されました。

9 最後に

  PSM分析のグラフ作成方法の説明がありました。