活動報告:2019年 8月度定例会

8月度定例会は、夏原会員の企画として『副業最前線!自分を200%いかす働き方』と題し、ナレッジワーカーズインスティテュート株式会社 代表取締役で中小企業診断士の塚本恭之様より、副業に関する動向と、中小企業診断士としての副業実践方法についてご講演いただきました。

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■副業に関する近年の動向

はじめに、働き方改革を切り口に近年の政府の取り組みについて紹介いただきました。

1980年代、日本のGDPや競争力は世界の中でも一二を争う水準でしたが、近年、生産性が大きく低下しています。このような現状に対して日本の生産性を向上させるために、政府が取り組んでいる施策や方針の公表について説明いただきました。

【取組例】

・「2030年展望と改革 タスクフォース報告書」において、人的資本大国実現のための具体例として、自ら働き方を選択する複線型の雇用モデルを提示(内閣府)

・2018年1月のモデル就業規則の改定により、政府として副業を原則容認(厚生労働省)

・副業・兼業促進のガイドラインを公表(厚生労働省)

 

また、国家公務員の副業解禁により約28万人が兼業の担い手となる可能性があることや、企業が副業を認めることへの障壁となっている総労働時間の管理方法を見直す検討が進んでいることを説明いただきました。さらに、他国の事例として、フランスにおける副業制度である個人事業主制度が2009年に導入されて以降、開業率が向上し、経済の活性化につながっていることを説明いただきました。

 

■ビジネス環境及び社会や個人の変化

次に、ビジネス環境の変化、社会や個人における変化について紹介いただきました。

2019年1月に副業を認める企業の割合が22%となったことが経団連から発表されたことを説明いただき、イノベーター理論におけるキャズムを超えているため、今後も副業を認める企業が増えることが想定されるとされました。また、副業を解禁している企業について、事例や経営者の考え方を説明いただきました。また、副業にメリットを見出していない大企業が未だ多い中、IT系の企業に副業を解禁する企業が多いことやその背景にある業界の特徴などを説明いただきました。

さらに、社会、会社、個人の変化について多方面から説明いただきました。

・大企業の人的資源確保の戦略が内部調達型から、外部リソースを積極的に活用する外部調達型に変化してきた。

・各自のリーダーシップによって成果が決まるようなプロジェクト型の仕事が増加することで、個人に求められるリーダーシップが変化しており、今後は全員主役型のリーダーシップであるシェアードリーダーシップが必要になる。

・労働人口の減少や人生100年時代の到来といった社会構造の変化から、パラレルキャリアが求められるようになるが、第2のキャリアには助走期間が必要である。

・知識を用いて人や社会に貢献する人材であるナレッジワーカーの考え方が重要視され、ますます人が経済の主役になる。

・資本家、経営者、労働者の関係がフラットになるため、人を惹きつけるビジョンや思いが、より大切になる。

 

■中小企業診断士としての副業実践方法

副業と一口に言っても、複業、伏業、復業といった様々な当て字で表されるように、対価の有無や契約形態などによって様々な類型がある旨や、それぞれのメリット・デメリットの説明に続いて、中小企業診断士としての副業の実践方法を紹介いただきました。

 

【プロボノ編】プロボノ活動に参加

方法①中間支援団体への登録

方法②自身で募集団体を探す

【コンサル編】コンサルタント業務を受託

方法①スキルシェアサイトへの登録

方法②顧問紹介サービスへの登録

方法③フリーランスコンサルタントサイトへの登録

方法④自身で支援団体を探す

【起業編】自身の会社を起業

方法①個人事業主

方法②非営利組織の創業

方法③株式会社/合同会社の創業

 

それぞれの方法について、オススメの中間支援団体やサービス、メリット、注意点などを説明いただきました。

また、社外での活動だけでなく、社内の他部署に対してボランティアやフリーランス等の立場で支援するという、社内複業という選択肢があることを説明いただきました。

その他、次のような点についても説明いただきました。

・経産省人材支援室が副業実践者を対象にしたアンケートで、「副収入が得られた」「良い経験になった」「新たな出会いがあった」のような、副業によって充実感が得られているという声があること。

・会社を辞めずに複業として起業した後に専業起業する方が、会社を辞めてから専業起業する場合に比べて、成功率が高いという日本政策金融公庫の調査結果があること。

 

■中小企業と副業

続いて、中小企業が副業に対してどのように向き合うべきかという考え方を紹介いただきました。

副業を認めている中小企業を対象に行ったアンケートによると、「本業の会社への忠誠心が高まる」「目標達成意識が高まる」といった良い効果が出ていることが伺えるため、中小企業においても生産性の向上のために副業を認めることが有効であるとされました。

副業が中小企業に与える良い影響として、人材採用において自社で正社員を雇用するのではなく、人材をシェアするという発想が可能になることや、社外に委託可能な業務を社外の副業人材へのアウトソーシングや協業で解決できることを挙げられました。また、中小企業が復業人材に来てもらうためには、自社の見せ方を工夫し、復業者にとって魅力のある企業であることを示すためのブランディングが重要であると説明いただきました。

 

■副業解禁はチャンス

最後に、副業解禁の流れは、企業の規模や法人/個人を問わず、多方面にチャンスをもたらす旨を紹介いただきました。

国として副業を解禁する流れは、中小企業にとって正社員採用が難しい昨今、複業人材による人手不足解消や事業承継面での後継者確保のきっかけ作りに有効である。大企業にとっては、オープンイノベーション人材の確保に有効である。中小企業診断士にとっても収入の複線化や起業がしやすくなる。同様に、ベンチャー企業、起業、非営利組織、個人等など多方面にチャンスがある。と締め括られました。

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■質疑応答

夏原会員に紹介いただいたリアルタイム質疑応答サービス「handsup!」を用いての活発な質疑応答が行われました。聴講した会員との間で交わされた質疑応答の一部を紹介します。

 

(質問)製造業や建設業の中小企業が複業労働者を受け入れる場合はどのような職種が多いか。

(回答)製造業のライン担当として受け入れるというよりは、経理や人事系のバックヤード業務で受け入れる事例が多くある。

 

(質問)個人事業主になるために開業届を提出するメリットは何か。

(回答)青色申告を行わない場合は税制面でのメリットはないが、創業における補助金・助成金を受ける機会を得られる点や、屋号を決めることで自身のモチベーションが高まるという点においてメリットがある。

 

以上