活動報告:2025年10月度定例会

開催日  2025年10月29日(水)19:30~21:30 

テーマ  『中小企業のためのビジネスと人権リスク対応』
     ~ステークホルダー対応と事例に学ぶ実務ポイント~

発表者  松木 裕 弁護士(東京弁護士会 中小企業法律支援センター委員)
     星 太輔 弁護士(東京弁護士会 中小企業法律支援センター委員)
     (日景 聡会員コーディネート)

 

講演内容の要約

「ビジネスと人権」は、もはや一部の大企業に限定されたテーマではなく、サプライチェーンを構成するすべての中小企業にとって不可避な経営課題となっている。国際社会の要請と国内法の整備が進む中、人権尊重への取り組みは企業の存続と成長を左右する重要な要素である。

本講演では、中小企業が直面する人権リスクの現状、国際的な枠組み、そして具体的な対応策を概説する。特に、フジテレビ事件の事例分析を通じて、人権問題への不適切な対応がもたらす深刻な経営リスク(取引停止、ブランド価値の毀損、巨額の損害賠償)が明らかにされた。

企業に求められるのは、人権侵害の「可能性」を認識し、予防的に行動することである。具体的には、経営者の明確なコミットメントに基づく「人権方針」の策定、サプライチェーン全体を対象とした「人権デューデリジェンス」の実施、そして被害が発生した際の「救済メカニズム」の構築が国際基準として不可欠である。人権リスクは、強制労働や児童労働といった深刻なものだけでなく、特に中小企業においては、長時間労働、各種ハラスメント、安全配慮義務違反など、日常業務に潜む身近な問題も含まれる。

結論として、人権尊重への取り組みは単なるコンプライアンス上のコストではない。従業員の満足度向上による人材の確保・定着、取引先からの信頼獲得、企業価値の向上に直結する「経営力強化」のための戦略的投資であると認識する必要がある。