活動報告:2019年 4月度定例会

4月度定例会は、岩本会員の企画として『日本の事業承継の生々しい現状を知る~平成30年度事業承継税制改正による変化は如何に?~』と題し、CRC企業再建・承継コンサルタント協同組合 理事/公認会計士・税理士の春田泰徳様にご講演いただきました。

今回の講演では、平成30年度の改正で大きく変わった事業承継税制の概要と留意点について、ご紹介いただきました。

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■平成30年度の法改正で創設された事業税制承継の特例措置について

初めに、平成30年度の法改正で創設された事業承継税制の特例措置についてご説明いただきました。 事業承継税制は平成21年度に経営承継円滑化法の枠組みの中で整備され、後継者が非上場会社の株式等を相続または贈与により取得した場合に相続税・贈与税の納税が猶予される制度であり、中小企業の事業承継を円滑にすることで、地域の雇用が確保されることなどを目的としていました。しかし、十分に活用されていないことから、平成30年度に事業承継税制の特例措置が創設されました。これまでの制度(一般措置)に並行する措置として制度化され、業界内でも『大盤振る舞い』な改正として、驚きを持って迎えられました。

今回の講演では特例措置について、

  • 10年以内(2027年12月31日まで)に実際に承継を行うものを対象とする
  • 都道府県に事前に特例承継計画の提出が必要(2023年3月31日まで)
  • 対象株式数の上限が撤廃され、相続税の納税猶予額が100%に拡大
  • 税制適用後の打ち切りリスクが低減されたこと

などの具体的な内容をご紹介いただきました。 制度の拡充前は年間400件程度の申請でしたが、制度拡充後の申請件数は年間6,000件に迫る勢いで増加しており、今後も高い水準で制度の活用が進むと見込まれています。

 

■特別措置の留意点について

次に、非常に使いやすいといわれる特例措置について、留意点をご紹介いただきました。

この制度では、事業承継に伴う贈与税・相続税が単純に免除されるのではなく、実際は後継者の納税が猶予されます。株式等の贈与時に本税制を受けた場合であっても、相続時の相続税算定額には、納税猶予を受けた株式等の価値も「みなし相続財産」として算入されるため、後継者以外の相続人の相続額に影響を及ぼすこととなります。また、親族外継承する場合では、相続申告時に親族外承継者も加わることとなり、手続き上の問題が生じうるそうです。その他にも、適用要件を満たさなくなった場合などに適用が取り消される可能性があり注意が必要となります。例えば、本制度適用中は毎年、継続届出書等の提出が必要であることや、資本金・準備金の維持などをご紹介いただきました。本制度を活用する際には、適用要件に該当しているのかを継続的にモニタリングし、手続きの管理体制を整備することが必要になり、大きな注意点になります。

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■さいごに

最後に春田先生は、本税制を使用するメリットがあるのは株式の総評価額がある程度高く後継者も決まっている会社であるとしたうえで、こういった会社はその時点で事業承継はほぼ成功していると言える一方、本当に事業承継が進んでいないのは、後継者がいない、事業価値が棄損している会社であると問題提起されました。 また、「期限のある制度であることから、事業承継の可能性のある会社は特例承継計画を提出する方が良いと言えます。制度を最終的に活用しない可能性があっても、計画を出すだけで、後継者探しの後押しになります。」とご紹介いただきました。

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